「2020年の東京オリンピックには、家族で行くことに決めたよ」。息子が柔道を習っているという、行きつけの鮮魚店店主が大声で話しかけてきた。
20年の夏季五輪開催地が東京に決まったことで、ローマ市も24年の五輪誘致に大きな希望を抱き始めた。マドリードに決まれば、その次は欧州の可能性は薄いと考えてきたが、東京ならチャンスが出てきたことになる。
実際、1964年の東京五輪の前はローマ五輪だったではないか。それなら、東京の次がローマでもおかしくないというわけだ。
施設も、かつてローマ五輪が行われた市北部の「フォロ・イタリコ」には、競技場に改装可能なサッカー場「スタディオ・オリンピコ」があるし、世界選手権が行われた水泳場もテニスコートもある。
国の財政難は、今回それが落選の原因の一つとされたスペインと同じだが、開催費は最近の総見積もりによると約82億ユーロ(約1兆800億円)で、国が半分支出できれば不可能ではないという。
だが、欧州で、東京の次を狙っている都市はローマだけではない。パリやベルリン、コペンハーゲン、スウェーデンのマルメーなどもあり、ローマの夢が「正夢」になるかどうかは神のみぞ知るである。
坂本鉄男
(9月15日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)