坂本鉄男 イタリア便り 驚きの高額年金

 イタリア国会で今月上旬、与党議員の質問に、政府側が社会保険公社が支給する高額年金について答弁した。

 最高額は、大手通信事業者テレコムイタリアの元幹部技師で月額(年額ではない!)が9万1千ユーロ(約1180万円)。税金で半分取られても600万円になる。2位以下の高額受給者はずっと額が下がるとはいえ、毎月数百万円を受給している。しかも、彼らの多くは現在も会社の顧問など役職についているため、実際の収入はさらに加算された額になるという。

 社会保険公社の年次報告によると、公社関係の年金受給者1600万人のうち、1種類だけの年金を受給する73%の人々の平均月額は1200ユーロ(15万6千円)だ。

 政府は3年前から経済危機対策の一環として、年額9万ユーロ以上の高額年金受給者から「助け合い資金」の名目で、受給額に応じて5~15%分を天引きしていた。だが、退官後に高額年金受給者となる判事が多い最高裁判所は「公平の原則に反する」と廃止させ、今年度から削減した金額を受給者に払い戻している。

 イタリアは社会党政権や旧共産党書記長が首相の左翼政権が誕生したこともある左翼的な国だ。結局、社会的平等とは選挙のスローガンだけで、実際の政策には関係がないのである。

坂本鉄男
(8月18日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)