今年2月の総選挙で第3党に躍進したイタリアの新政党「五つ星運動」は、公約に「議員定数と歳費の大幅削減」と「当選した暁には、余分な歳費の返上」を掲げたが、いざもらう身分になると「返上額」をめぐり内輪もめが始まった。世界最高水準のわが国ほどではないが、イタリアの議員歳費も一般市民の常識から見れば驚くほど高額だ。
イタリアの国会議員は月額5千ユーロ(約66万円)の歳費、月額3500ユーロの宿泊費と食費、1600ユーロの交通費と電話代、3700ユーロの選挙民との関係費その他で月額約2万ユーロを受け取る。4千ユーロ前後とされる製造業の中間管理職の月給と比べても、その多さが分かる。
五つ星運動の指導者グリッロ氏は「月額2500ユーロもあれば十分で、その他は公約通り返納すべきだ」と主張したが、多くの新人議員は「ローマの滞在費は想像以上」と返納に消極的で、党の分裂騒ぎに発展しそうになった。
党のクリミ上院議員会長は「私が地方の裁判所に勤めていたときは年収が2万ユーロだった。今はこの額を毎月受け取ることになる」と若手議員を説得し、結局、手取り月額約3千ユーロで決着した。世界一という巨額の財政赤字を背負うわが国の国会議員も少しは見習ったらいかがだろうか。
坂本鉄男
(5月26日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)