去る2月末のイタリア総選挙では、15年以上も全国を行脚して環境問題や政治改革を叫び続けてきた漫談家(わが国の“お笑い芸人”のイメージとは異なる)、ベッペ・グリッロ氏(64)率いる新党「五つ星運動」が上院に54人、下院に109人の国会議員を送り込み第三党になった。だが、新党の党員と支持者は、腐敗した左右両派の既成政党に怒りを抱く若者が中心であり、既成政党との妥協を拒んでいるため、政局は混迷し、早期解散と再選挙の可能性も否定できない。
グリッロ氏自身は国会議員になっていないが、同党の国会議員の平均年齢は、上院議員が規定の最低年齢を6歳上回るだけの46歳、下院議員が33歳という若さだ。学歴は議員163人のうち大卒が101人。職業ではサラリーマンが47人、教師が14人、自由業が15人、ブルーカラーが5人、失業者が10人、学生が11人と、あらゆる階層の若者たちで占められている。女性も58人と3分の1を超える。
この政治経験のない若者の集団が、左右両派の古参政治家に対抗し、政党補助金の廃止や議員定数と歳費の大幅削減などの公約実現にどこまで迫れるか見ものである。一方、政治的理念によって固く結ばれているわけではなく、「烏合(うごう)の衆」に陥る危険性もある。
坂本鉄男
(3月24日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)