今日は桃の節句である。だが、おひなさまに「娘が立派なお婿さんに恵まれますように」と願う親は今や考えが古い。あと20年もたてば、娘が「お婿さん」でなく「お嫁さん」をもらう可能性だってあるからだ。
昔は、いや、日本では現在でも、同性婚は法律上認められておらず、仮に同性同士で一緒に住んでも、社会的には「ゲイ」とか「レズ」などと白い目で見られることが多い。
カトリックの勢力が強かった昔の欧州では、結婚とは「1組の男女が教会で神の前で生涯変わらぬ愛を誓い合い、子供をもうけ新しい家族共同体を築くことを約束し、神から祝福を受けること」であった。現在のイタリアも同様のレベルである。
だが、カトリック離れが進むと、欧州の多くの国が同性婚を認め始めた。2001年にオランダで同性婚を認める法律が施行されて以来、05年にかつてのカトリック大国スペインが同調。フランスと英国でも同性婚に一定の権利を認める法律が制定された。また、同性婚の2人が養子をとることを認める国も増えている。米国でも同性婚を認める州は増えている。日本でも、息子が「これが僕の連れ合いです」とひげを生やした男性を連れてきても驚かない心構えが必要になる時期が来るかもしれない。
坂本鉄男
(3月3日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)