坂本鉄男 イタリア便り 青い目

 幼いとき、「赤い靴履いてた女の子」の童謡を歌った思い出のある方はもう後期高齢者だけかもしれない。その3節に「今では青い目になっちゃって、異人さんのお国にいるんだろう」とある。詩人、野口雨情が1921年、ある北海道開拓移民の不幸な少女の話を元にこの詩を詠んだ時代には、青い目とは異人さんの目を代表していた。

 人類の目の色は、日本人の大半がそれである濃褐色から北ヨーロッパ人に多い明るいブルーまであって、この「青い目」とは、女の子を養女として米国に連れ帰ったと思われていた米国人宣教師の目を意味していた。

 濃褐色系の目が多い日本人やイタリア人には、肌が白く金髪で目の青い異性に憧れる人が多い。だが、異性の気を引くために、髪は染めて金髪にできるし、肌は化粧品を塗って真っ白にごまかせても、目の色だけは無理だった。

 ところが、である。昨年のイタリアの新聞によると、カリフォルニア州の米国人医師がレーザーで黒い瞳のメラニン色素を取り去りブルーにさせる方法を開発した。手術費も約4千ドル(約31万円)というから最近の円高なら決して途方もない金額ではない。

 だが、あなた、鏡の前でもう一度自分の顔を眺め、青い目が似合うかどうかよく確かめた方がいいですよ。

坂本鉄男
(10月7日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)