ロンドンで開催中のパラリンピックで日本選手の活躍には目を見張るものがあるが、イタリア選手の中にもまれな経歴を背負った素晴らしい選手たちがいる。
第1が、陸上・伴走者付き1500メートルで銅メダルを獲得した盲目女性のアンナリーザ・ミネッティ選手(35)だ。歌手としてデビューした彼女は10代のころから眼病のため視力を失っていったが、くじけることはなかった。1997年の「ミス・イタリアコンクール」では最終予選まで残り、翌98年の「サンレモ歌謡フェスティバル」では優勝を果たしている。その後、歌手としての活動の傍ら陸上競技を始め、今回の銅メダルにつながったわけだ。
第2は、ハンドサイクル・タイムトライアルで見事金メダルに輝いた元F1レーサーのアレッサンドロ・ザナルディ選手(45)である。彼はF1をやめた後、別の自動車レースに移り、優秀な成績を挙げていたが、2001年9月、ドイツでのレース中に大事故に巻き込まれ、両足を膝上から切断した。だが、09年からハンドサイクルを本格化させ、今回の成功に至ったわけだ。
ハンディキャップにもかかわらず見事な成果を収める彼らの姿は、「強固な意志」があればどんな困難でも乗り切れることを教えてくれる。
坂本鉄男
(9月9日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)