ビールのうまい気候が続く。暑い夕方には白ワインで一杯というより、やはりよく冷えたビールがよい。
イタリアでも近年、急速にビールの消費量が増えてきたが、2010年で年間1人当たり約27リットルと、チェコの132リットルやドイツの107リットルにはもちろんのこと、日本の45リットルにもまだまだ遠く及ばない。
11年のイタリアのビール生産量は125万キロリットルだが、国産企業は少なく、150年以上の歴史と「ナストロ・アズーロ」の看板銘柄で第1位を誇っていたペローニ社が05年に英国の企業に買収されてからは、これまた長い歴史を持つモレッティ社を除き、市場は多国籍ビール会社が独占している。
しかし、幸い約40年前から小さな町工場規模の地ビールが出現し始め、最近は約200軒にまで増えた。もっとも、シェア生産量はごくわずかな程度にとどまっている。
だが、味の改良や味の特色を出すことに力を注ぎ、愛飲者を増やしている。また、有名な地産地消推進団体「スローフード」でも「地ビールガイド」を出版し応援している。
私も、最近はレストランで各地の地ビールを注文することにしている。舌の肥えた国だけに、今後の味の向上には大きな期待が持てる。
坂本鉄男
(8月26日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)