枢機卿とは法王選挙で投票権と被選挙権を持つカトリック教会で法王に次ぐ最高位者グループの一人だ。昔の枢機卿や法王の収集物は美術品が多く、結局、これが現在のバチカン美術館やボルゲーゼ美術館など多くの美術館の土台になってきた。
だが、今年の2月に枢機卿に任命された法王庁の財産管理局長官カルカーニョ枢機卿(68)の収集品は一風変わっている。彼の収集品は平和的な美術品とは正反対の武器。しかも昔の刀剣類ややりなどではなく、ピストルやカービン銃など最新式小火器である。
亡父の遺品の旧式銃のほか、レミントン社の猛獣狩り用ライフル銃やスミス&ウエッソン社のマグナム弾用ピストルなど最新式の武器11丁と弾薬を所有している。そこいらの暴力団やギャング顔負けの武器の量だ。
もちろん、すべての武器は警察に登録済みで、狩猟や射撃が趣味の同枢機卿は、武器携帯許可証のみならず狩猟許可証や射撃クラブの会員証まで持っている。法王庁に勤務する枢機卿はバチカン市国内に住居をもらえるので、同枢機卿もすべての武器を住宅の戸棚にしまっていることになる。世の泥棒に告ぐ、バチカン市国に入っても同枢機卿の住居にはゆめゆめ近づかないこと。
坂本鉄男
(4月22日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)