坂本鉄男 イタリア便り ネコにキウイ

 最近の農業統計によると、かつては世界1位であったイタリアのキウイの年間生産量は約43万トンと、原産国の中国の約49万トンに1位の座を譲り渡し、世界2位だそうだ。

 一方、ニュージーランドは1900年代初頭に中国から原種を移植栽培し、キウイフルーツと命名し世界中にキウイの名を広めたが、第3位の約38万トンになっている。ちなみに、キウイの名はその色がニュージーランドの国鳥キウイの色に似ていることから出ている。

 イタリアのキウイ生産は約50年前からブドウ生産農家の転作から始まったが、気候が適していたため、またたく間に世界有数の生産国の一つになった。主生産地もローマを州都とする中部のラツィオ州、トリノを州都とする北伊のピエモンテ州の2州でイタリア生産量の大半を占め、重要輸出果物の一つである。

 イタリアのキウイ農家の大敵はネコだ。ネコは若木の匂いに引き寄せられ、幹を爪で引っかいたり、かじったりするため、若木は根元に網を巻いて守ってやる必要があるそうだ。

 一体、なぜキウイの若木にネコが寄っていくのだろうと不思議に思っていたら、キウイはマタタビ科の植物だということが分かった。「ネコにマタタビ」のことわざを持つ日本人として「なるほど」と合点した次第である。

坂本鉄男
(1月22日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)