坂本鉄男 イタリア便り 常識外れの議員年金

 累積する赤字国債の重みに押し潰されたイタリアでは経済学者らテクノクラート(実務家)で構成されるモンティ内閣が発足した。

 これに呼応するように、11月下旬、フィーニ下院議長が「政治費用を削減する手始めとして元議員への年金を廃止しよう」と発言して衝撃を与えた。イタリアの上下国会議員の歳費は、欧州一の高さといわれているが、元議員への年金も常識外れだ。

 1996年に改正された現行法によると、65歳になると、5年間、国会議員を務めた者は毎月2300ユーロ(約24万円)、10年議員は4800ユーロ。15年議員は7000ユーロ強の終身年金をもらうことになっている。

 現在、年金を受け取っている元議員の人数は2238人となり、彼らに毎年支出される年金総額は、2億1300万ユーロ(約221億円)の巨額に上る。

 現行法改正前の年金受給開始年齢と年金額はもっと寛大で、例えば、先月に満60歳を迎えた元ポルノ女優で議員を1期務めたチチョリーナ女史は今後一生、毎月3000ユーロをもらう。

 ドイツの国会議員は5年務めて毎月930ユーロ、英国議員は500ユーロ以下だという。

 長年甘い汁に慣れてきた国会議員が下院議長の提案を容易に受け入れるとは思えない。

坂本鉄男
(12月4日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)