最近まで、日本の強みは、貧富の格差が少なく中流階級層の厚さにあるといわれていた。ところが、日本の相対的貧困率は増え続け、2009年は16・0%。先進国では米国などとともに社会問題化している。
現在の日本は貧困層と富裕層の増大により、中流階級の層が薄くなりつつあるわけだ。今年6月の生活保護世帯は約148万世帯で過去最多を更新し続けている。13年連続で、自殺者が年間3万人を超える状況は健全であった日本社会の崩壊を示すものでしかない。
こうした傾向はイタリアでも現れている。昨年末のイタリア銀行の報告によると、全国民の総資産の半分が10%の人々の手に握られているという。また、イタリア統計局によると、10年現在で11%の家庭、つまり800万人が貧困層に属すという。9月上旬のカトリック系労働組合の発表では、イタリアの中流階級と考えられる階層130万人の申告所得の平均年額は2万2千ユーロ(約250万円)で、決して豊かな暮らしを支えられる額ではない。
ただ、イタリアの強みは世帯の8割が持ち家に住み、日本と比べ相続税が安く、個人財産が代々、維持されやすいことだ。財政赤字の穴埋めに相続税値上げを狙う日本の政治家は、国民にさらなる貧困をもたらそうとしている。
坂本鉄男
(10月30日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)