日本でも最近、月額70万円をもらう元東電社員の高額年金が話題になったが、国民年金と厚生年金だけの元サラリーマンらと、企業年金制度のある優良企業の元社員の月額年金の差は倍以上もある。
年金制度が日本より発達していると考えられているイタリアでも同じで、勤務した職種、掛け金総額と支払い年数によって退職後の年金受給額の差は非常に大きい。イタリアの一般労働者の平均年金受給額は年額1万7190ユーロ(約176万円)で決して高くない。
だが、最近の管理職組合(日本と違って管理職にも組合が存在する)の発表によると、富裕層と見なされる年収9万ユーロ(約923万円)以上の年金受給者は14万人もいるという。
イタリアでは年金にも普通の税率で課税されるものの、死ぬまで月額約76万円をもらう年金長者が現時点でさえ、14万人もいるとは驚かざるをえない。
高額年金受給者は、特別な年金制度を持つ国会議員、司法関係者、イタリア銀行行員などに多いほか、本業および兼業からの複数の年金受給者に多い。例えば最高の部類に属す旧社会党のアマート元首相の年金は月額2万2千ユーロ(約225万円)だ。
老後の安定した生活を保障する年金に大きな格差がある国は三流国である。
坂本鉄男
(10月9日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)