坂本鉄男 イタリア便り 子供の名前

 子供の名前はある意味では親の気まぐれで決められることが多い。大手生命保険会社の調査によると、2010年生まれの男の子の名前の一番人気は4年連続で「大翔」で、女の子は「さくら」だという。

 まさか、全ての親が、このほど史上最速の生涯獲得賞金7億円を突破したプロゴルファーの横峯さくら選手のようになることを望んで、娘の名前を付けたのではあるまい。

 イタリアの伝統的な命名法はカトリックの聖人や聖女の名前から取ることで、09年の統計によると、男の子で一番多かったのはイタリアの国の守護聖人、アッシージの聖フランチェスコから取った「フランチェスコ」だ。

 女の子の名前の一番人気は、古代ローマの名門貴族ユリウス家の家名に由来し、語呂が良いので20世紀初めからはやり始めた「ジュリア」であった。

 ローマ法王ベネディクト16世は今年1月、21人の赤ん坊に洗礼を授けた際に「命名はカトリックの伝統に沿うように」と述べられた。カトリックの伝統が薄れてきているからで、イタリア・サッカーのトッティ選手のように、子供に「シャネル」という名前を付けた例もある。

 日本の親も、いっそのこと、将来外国でも通用するような名前を付けてはいかがだろう。

坂本鉄男
(6月19日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)