アフリカ諸国の動乱は、これまでも地中海を渡って欧州に逃げてくる多数の難民を生み出してきたが、最近のチュニジア政変とリビア内戦により「人間津波の襲来」とさえ呼ばれるほどの難民が押し寄せている。
1988年以来、欧州に渡ろうとして、海上で遭難し溺死した難民の数は5日夜の250人の遭難者を含め1万5千人以上にもなり、人道上の問題でもある。特に、チュニジアやリビアからひと晩で小型船で到達できるイタリア最南端のランペドゥーサ島は、本来は観光を主要産業とする島にもかかわらず、3月下旬には、1週間で島民総数の4倍以上にもなる2万6千人の難民が上陸した。
もちろん、島に大量の難民を収容する施設はなく、治安・衛生上の問題も深刻化してきた。政府が海軍の艦船などで、各地のテント村へ移送を開始したが、受け入れに難色を示す自治体も多い。欧州連合は難民救助の方針だが、実際はイタリアだけに負わされているのが現状だ。今後もどのくらいの数の難民が来るか予想もつかない。
一番多い難民はチュニジア人のためベルルスコーニ首相は急遽(きゅうきょ)、チュニジアに飛び、難民送還を提案したが受け入れられなかった。わが国でも、いざ近隣諸国で動乱が起こった際の難民対策を考えるべきだと思うのだが。
坂本鉄男
(4月10日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)