イタリアのベルルスコーニ首相のモロッコ人少女に対する買春疑惑は今や世界中の話題となり、これにはさすがのナポリターノ大統領やローマ法王庁も政治家のモラル順守と順法精神について異例の声明を出すに及んだ。
首相の悪癖は今回に始まったことではない。2009年に30年近く連れ添ったベロニカ前夫人が愛想を尽かして離婚に踏み切った際に漏らした「あの男は未成年女性の後ばかり追っています。病人です」との言葉が証明しているとも言えよう。
買春疑惑を追及するミラノ検察当局は、これまでも脱税を含む各種の疑惑で首相に迫ったが、強力な弁護団と一種の政治的介入などが立ちはだかり、時効などに追い込まれた苦い経験がある。
検察当局は今回、首相取り巻きの若い女性たちの綿密な取り調べや長期にわたる盗聴、家宅捜査により膨大な証拠を集め、国会に訴追許可を求めたが、結局、与党委員の多い審査委員会で「権限外」と却下されてしまった。
イタリアの民間テレビ界を独占する超富豪、政界では長期政権の指導者、国際社会ではプーチン露首相やリビアのカダフィ大佐と個人的な親交が深い政治家だが、個人的「悪癖」による政治生命の危機が回避できるか否か注目される。
坂本鉄男
(1月30日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)