12月のクリスマス前に必ずイタリア上院ではクリスマスコンサートが開かれ、テレビ中継される。
これは慈善コンサートで、今年も19日正午過ぎから、おなじみのクラウディオ・シモーネ指揮の「イ・ソリスティ・ベネティ」と盲目のテノール歌手、ボチェッリを迎えて開かれた。
いつもは与野党議員が口角泡を飛ばす上院議場には、大統領、上下両院議長、与野党の議員有志とその家族のほか、一般人も1人当たり最低120ユーロ(約1万3千円)の寄付金を払いビバルディ、ヘンデルほかの歌曲や名曲の演奏を楽しんだ。
この寄付金は慈善事業に寄付され、昨年度はローマの国立小児専門病院に寄贈されている。イタリア下院も上院も、ローマ市内のど真ん中の交通至便のところにあるので音楽会には便利だ。当然のことながら政府与党が右翼であろうと左翼であろうと、国会でのコンサートや大統領が出席する音楽会やオペラでは必ず全員起立のうちにイタリア国歌が演奏される。
わが国の国会も議員バッジを付けた者だけが独占するのではなく、たとえイタリアのように音楽を理解する議員が多くないにせよ、時にはコンサートなどを催して、主権者たる国民が手軽に出入りできる機会を作るべきではなかろうか。
坂本鉄男
(12月26日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)