いくら子供がほしい日本人の夫婦でも外国人の子供を養子にするのはそう簡単ではないだろう。今までの日本社会に存在してきた人種的偏見を知っているからだ。
この点、自分たちの曽祖父母の時代から外国に多数の移民を出し、外国人の親戚(しんせき)や外国に居住する親戚が多いイタリアでは、社会的人種偏見は少ない。
実際、イタリアは米国に次いで外国人養子が多い国で、例えば2008年が3951人、09年が3964人と近年は3000人台を維持している。
また、子供の出身国にも時代的変化があり、以前はベトナム、カンボジアなど、どちらかというとアジアの貧困国が多かったが、最近は旧東欧圏と南米諸国が多いという。
確かに昨年度はロシアが704人と一番多く、次いでウクライナ、コロンビアなどが続く。
合不法を問わずイタリアには多数の移民が住み、すでにローマだけで出生地がローマでありながら外国パスポートを持つ子供が5万人もいる。彼らは成年になるとき、ほとんどがイタリア市民権を取得し普通のイタリア人として一生を過ごすと推定される。むごい親に虐待されて死ぬ子供の記事を読むたびに、日本にもらう人がないなら外国に養子に出す方法もあっただろうにと思ってしまう。
坂本鉄男
(12月19日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)