人間とは生来卑しい根性の持ち主が多い。日本でもイタリアでも、議員になったり官庁で高い役職についたりすれば、それだけ高い給料をもらうのだから自分の車を使い、自腹でタクシーに乗ればよいのに、生来の卑しい根性が出るのか、それとも役得とでも思うのか、国民の税金でまかなわれる公用車に乗りたがる。
官庁の予算の大削減に踏み切ったイタリアでは、ブルネッタ行政相が公用車の異常な多さを指摘し、近く議会に公用車30%削減案を提出すると宣言している。同相によると、イタリアの公用車の総数は9万台。この数はドイツの5万4千台、英国の5万5千台、フランスの6万5千台に比べEU(欧州連合)内でも群を抜いているという。
イタリアの公用車のうち、1万台が国会、地方議会議員、政党関係者、2万台が中央と地方官庁の高級官僚用、あとの6万台は役所の仕事用だという。このガソリン代、保険料などの維持費は1台あたり年間平均3300ユーロだから、全部で2億5千万ユーロ以上もかかる。そればかりではない。公用車のうち3万台は運転手付きだというから無駄遣いも甚だしい。
財政難の日本でも、赤字国債を発行する前に、まずは国会議員や高級役人が使う公用車の大削減から手を付けたらいかがだろう。
坂本鉄男
(11月7日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)