週3回も抽せんのあるイタリアの「富くじ」ともいうべき「スーペルエナロット」は今年2月9日以来当たりが出ていなかったため、賞金がうなぎ上りに上がり、10月8日現在でとうとう1億5800万ユーロ(約181億円)の巨額に達した。
わが国の宝くじとは違い、1から90までの6数字全部の的中(的中確率は6億2200万分の1)が出なければ賞金が無限に積み上げられる方式だからだ。
ちなみに至難の業である5数字の的中以下3数字の的中までの賞金は1等賞金と比べると0に等しいくらい少ない。要するに「イチかバチかのくじ」である。
だが、1等の賞金額が莫大(ばくだい)になるにつれ、「一獲千金」を夢見て賭ける人が増大し、売り上げの約50%近くを吸い上げる国庫はホクホクだ。
しかも、イタリアの公認の賭けは「スーペルエナロット」だけではなく、日本でも有名な「トトカルチョ」のほか、「競馬」など無数にある。
ある調査機関によると2009年のイタリア人1人当たりの年間平均消費額1万5千ユーロのうち、約6%に当たる900ユーロが何らかの賭けに使われたそうだ。経済危機を乗り越えるために、庶民が一獲千金を狙い賭けに走り、国庫が肥えるとは悲しむべき現象と言わねばなるまい。
坂本鉄男
(10月10日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)