誰でも取る夏休みだけに、ローマ法王だって例外ではない。
ポーランド出身だった前法王ヨハネ・パウロ2世は若いころスポーツマンで山歩きが好きだったので、晩年身体が不自由になったときを除き、9年間は南アルプスのアオスタ渓谷、6年間はドロミーティ山系で夏を過ごした。
神学者でピアノが好きなドイツ出身の現法王ベネディクト16世は、昨年までは前法王に倣って5年間は夏休みを南アルプスの山中で過ごしたが、今年は7月7日の恒例の水曜日謁見を終了すると、午後からローマの南約35キロのカステル・ガンドルフォの法王専用の別荘に8月終わりまで夏休みを過ごしに出かけた。
ここなら、700キロ離れた南アルプスと違って、緊急時にもベルトーネ国務長官はじめ法王庁の幹部が簡単に駆けつけられるわけだ。
この別荘は、アルバノ湖を見下ろす丘陵にあり1600年代前半に当時の法王が建てたもので、周囲を55ヘクタールの庭園などに囲まれたバチカン市国領、つまり治外法権に守られている。
法王は、ドイツから呼び寄せた司祭の弟やドイツ人の側近とともに、祈りや思索、庭園内の散策、読書と執筆などのほか、グランドピアノに向かって、これまたピアノの名手の弟と大好きなモーツァルトやハイドンの曲を弾いて過ごす予定である。
どうか静かな夏休みでありますように。
坂本鉄男
(7月18日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)
(7月18日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)