通貨偽造は国の通貨制度を乱す重大犯罪のため、昔は、日本でもヨーロッパでも通貨偽造の罪は重かった。
徳川時代は親や主人殺し、禁止されていたキリスト教信仰や関所破りなどと同じ罪の重さで、磔(はりつけ)にされた上、3日間死体がさらされた。
英国でも大逆罪で死刑に決まっていた。
ところが、19世紀後半になると、日本でも英国でもこの犯罪による死刑はなくなり、現在は日本では無期または3年以上の懲役、欧州連合(EU)加盟各国では懲役3年から12年までが普通だから、昔と比べると刑は大幅に軽くなった。
こうした理由からか、最近も通貨偽造事件は跡を絶たず、欧州中央銀行の調査によると、2009年下半期だけで44万7千枚のユーロ偽造紙幣が発見され、前年比8%増だという。ユーロ流通以来8年が過ぎた現在、偽造技術も年々向上しているから始末が悪い。
EUの中ではイタリアでの偽造犯罪が一番多く、イタリア中央銀行によると、昨年同期にイタリアで発見されたニセ札は8万1181枚に上る。同時にイタリアの警察はこうした犯罪捜査に詳しいことから検挙数も一番多い。
以前は紙幣の偽造は50ユーロ(約5500円)以上の高額紙幣が多かった。だが、最近は一番多い偽造紙幣は20ユーロ(約2200円)札だというから油断は禁物である。
坂本鉄男
(5月24日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)
(5月24日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)