毎年11月の第3木曜日(今年は11月21日)は、ワイン好きにとっては待望の「ボージョレ・ヌーボー」の販売解禁日である。
このワインは、ブドウを搾った液を発酵させ時間をかけて熟成させる伝統的なワインとは醸造方法が違うものだ。
フランス中東部のボージョレ地区で取れるガメイ種ブドウを房のまま容器に詰めて密封し、ブドウ自体の重みで流れ出す液を、これまたブドウ自体から発生する炭酸ガスにより発酵させた短期間で出来上がるワインである。
タンニン味が低く、フレッシュな香りが楽しめるのだが、保存がきかないため年内に飲みきる方がよい。
近年、イタリアでもボージョレ・ヌーボーの製造方法を取り入れていろいろなブドウ品種で造られているが、伝統的な方法で醸造する新酒ビーノ・ヌオーボと区別して「ビーノ・ノベッロ」の名称で親しまれている。
このビーノ・ノベッロは、法律により伝統的醸造法で造られた新酒を60%加えることが許されているほか、アルコール度も11%以上と規定され、10月末から12月末まで販売される。
伝統的醸造法で生産された年代物を好むワイン愛好者はボージョレ・ヌーボーを敬遠しがちと聞く。今年はイタリア産ビーノ・ノベッロを試されてはいかが。
坂本鉄男
(2019年11月26日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)