坂本鉄男 イタリア便り カトリックの枢機卿とは

アルゼンチン出身のローマ法王フランシスコは来る10月5日に枢機卿会議を招集し、13人の新枢機卿の任命を発表する。では、枢機卿とは全カトリック教会の中でどのような地位を占める聖職者なのであろうか。

 簡単に言うと、法王自ら選任する、法王に次ぐ高位聖職者だ。終身制で、80歳になるまでの間に実施される「コンクラーベ(法王選挙)」で、選挙権および被選挙権を持つ。

 中世から前世紀までは、法王庁内の権力構造により枢機卿の数が少なく、しかもイタリア出身者が大部分を占めていたので、必然的にローマ法王はイタリア出身者と決まっていた。

 実際、1522年選出のオランダ出身のハドリアヌス6世から1978年選出のポーランド出身のヨハネ・パウロ2世が選出されるまでの間、実に約450年もイタリア人が法王の座を独占していたのである。

 現在は法王選挙権を持つ枢機卿の数は原則120人と決められ、布教上の必要から世界各地から選ばれることが多くなった。

 カトリック系紙によると、今年末の選挙権保有枢機卿を地域分けすると、欧州50人(うちイタリア20人)、ラテンアメリカ23人、アフリカ17人、アジア14人、北米12人、大洋州4人だ。イタリア人法王選出の可能性はさらに低くなった。

坂本鉄男

(2019年10月1日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)