坂本鉄男 イタリア便り ノンキな日本人

先日、経済が専門のイタリア人の友人に言われた。「君の言うとおりイタリアは財源がないのにポピュリスト(大衆迎合主義者)政権がバラマキ政策を取ろうとするから大変だ。だが君は日本の財政赤字のすごさを知っているのかい」と。

 彼によると、イタリアの債務残高は国内総生産(GDP)比で約130%と欧州連合(EU)でギリシャに次いで高く、EUの一員だけにEU欧州委員会から絶えず警告を受けている。一方、日本には警告をしてくれる国際機関はなく、債務残高は膨れるばかり。GDP比では先進国の中で最も高い約240%という。

 これは、日本国民1人当たり赤ん坊を含め850万円以上の借金になり、給与所得が年額550万円の若年家庭で、例えば夫の収入だけで暮らす3人家族なら、4年以上飲まず食わずで借金返済に追われる額だという。「老後に2千万円が必要」どころの騒ぎではない。

 EU諸国では消費税は20%前後が普通だが、この高税率でも国民はなんとか過ごしている。日本は10%への消費増税をめぐり大議論が起きているが、将来に残しかねない莫大(ばくだい)な借金の減額のためなら我慢もやむをえまい。だが、もしバラマキ政策のためとなれば、日本もポピュリスト政権と呼ばれることになるだろう。

坂本鉄男

(2019年7月9日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)