身近な話題をも上質の文体に包み込む須賀敦子の魅力は、没後 20 年余りを経てなお、色あせることがありません。 存命なら今年 90 歳。ひょっこりこの世にもどってきたら、ミラノの街角で自分の足跡をたどる日本人旅行者の姿にえっ?とまん丸にした目を、やがて笑顔に包みこむことでしょう。 持ち前の知性でとらえた「別の目のイタリア」を、彼女の人となり、日本語⇔イタリア語双方の膨大な翻訳、晩年 10 年足らずで開花させた作家としての仕事を軸にさぐります。 |
第4回 須賀敦子を魅了した現代イタリアの作家(1)アントニオ・タブッキ ~ 境界の喪失 ~ |
須賀敦子がタブッキの存在を知ったのは、友人に勧められて手に取った『インド夜想曲』でした。 須賀さんが久しぶりにタブッキと顔を合わせたのは、1997年秋にタブッキ夫妻が初来日された時でした。 その折関西方面に出かけられた数日を除き、ご夫妻のアテンドとして箱根の温泉旅行も含め、ずっと行動を共にさせていただきました。 子供の頃祖父の話に耳を傾けるのが常だったヴェッキアーノに避暑に赴くと、今だに祖父の声が聞こえるようで、自然と物語が書きたくなること、語る“raccontare”ことへの思い入れなどさまざまな話をしてくださいました。 『供述によるとペレイラは・・・』で、なぜあれほど頻繁に Sostiene Pereira が繰り返されるのか、その謎についても解き明かしてくれました。 独り占めしておくのはもったいないので、タブッキの生の声を織り交ぜながら、自己と他者の境界を喪失させたり、分身(ダブル)を多用させたりするゲーム性の高い彼の文学世界に分け入っていこうと思います。 |
<講師プロフィール> 森口 いずみ(もりぐち いずみ) |
申込名 | 開催日 | 時間 | 会場 | 参加費 | 備考 | |
SUGA -4 | 8/3(土) | 17:00 ~ 18:30 | ゲーテインスティツゥート 東京2F207 セミナールーム | 会員 | 2,000円 | |
受講生 一般 | 3,000円 |
※こちらの連続文化セミナーは全 6 回、すべて同じ時間帯・受講料・会場で開催いたします。
申込名 | 回数 | 開催日 | テーマ | 講師 |
SUGA-1 | 第1回 終了 | 4/20(土) | 序論 - 日本の須賀敦子 ・須賀敦子のイタリア | 白崎 容子 (元慶応義塾 大学教授) アンドレア フィオレッティ (東京外国語大学 特任准教授) |
SUGA-2 | 第2回 終了 | 5/18(土) | 須賀さんの思い出 ― その足跡をたどりながら | 木村 由美子 (河出書房新社 編集者) |
SUGA-3 | 第3回 終了 | 6/22(土) | 須賀敦子と翻訳 - 日本とイタリアを 往還する眼差し | アンドレア・ フィオレッティ (東京外国語大学 特任准教授) 高田 和広 (日伊協会講師) |
SUGA-4 | 第4回 終了 | 8/3(土) | 須賀敦子を魅了した 現代イタリアの作家(1) アントニオ・タブッキ ~ 境界の喪失 ~ | 森口いずみ (東京外国語大学 講師) |
SUGA-5 | 第5回 終了 | 9/14(土) | 須賀敦子を魅了した 現代イタリアの作家(2) エルサ・モランテ ~ 語りの魔術師 ~ | 北代 美和子 (翻訳家) |
SUGA-6 | 第6回 終了 | 10/19(土) | 須賀敦子を魅了した 現代イタリアの作家(3) ナタリア・ギンズブルグ ~「作家」須賀敦子への道を ひらいたもの~ | 白崎 容子 (元慶応義塾 大学教授) |