観光客がバチカンのサンピエトロ大聖堂にミケランジェロの傑作「ピエタ」像を見に入っても入場料はタダである。
一方、初めて日本旅行をしたイタリア人観光客は京都のお寺がどこでもかなり高い入場料(拝観料)を取るのに驚く。教会やお寺は本来は信者が礼拝に訪れる場所だから、昔はお金を取ることはなかったが、イタリアでも入場料を取るところは多くなった。
例えば、フィレンツェのサンタ・クローチェ大寺院は8ユーロ(約1千円)、ゴシック建築で有名なオルビエートの大寺院は4ユーロと入場料を取る。イタリアの教会は、修道会や個々の信者団体が所有するものが多いが、内務省所轄の国有寺院も全国で820あり、観光客が訪れる有名な寺院が多数含まれるという。
これらの国有寺院を管轄する予算は、年額600万ユーロ(7億8千万円)しかないらしい。映画のロケに使わせたり、所蔵の重要文化財や美術品を貸し出して貸借料を取ることもあるが、そんなものは定期収入には計上できない。
そこで、サルビーニ副首相兼内相が考え出したのが、全ての有名な国有教会で入場料を課すことだ。イタリアは世界屈指の観光国だけに、実現すれば、ますます「全てはカネ次第」になるだろう。
坂本鉄男
(2018年12月4日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)