移民問題で強硬姿勢を取るイタリアのコンテ政権のサルビーニ副首相兼内相が移民排斥に関する主張で物議を醸している。
サルビーニ氏は10月初旬、ドイツで難民申請を却下されたアフリカ移民が独政府のチャーター機で経由地となったイタリアに送還される計画が明らかとなったとき、イタリア国内の空港を閉鎖すると警告した。
コンテ政権は、6月にもアフリカ移民を乗せて地中海を漂流していた民間救助船アクエリアス号の伊南部への入港を拒否。フランスなど他の欧州連合(EU)加盟国との間で軋轢(あつれき)を生んだ。
EUは人道的見地から難民受け入れには寛容とされてきた。シリア内戦初期の難民が割と高学歴で、ある程度裕福だった点は良かったかもしれない。しかし、内戦の長期化による難民の激増に加えて、政情不安と民族間の争いが原因の貧困から逃れるアフリカ難民が際限なく地中海を渡ってくると、状況は変わってきた。EUは6月の首脳会議で、加盟国による自主的な移民施設の新設で合意した。
サルビーニ氏の排外的な言動は若者の支持を集め、移民への反発はイタリア国内のポピュリズム(大衆迎合主義)を活発にしている。コンテ政権にはEU主要国の自覚を持ち、問題解決に向けて責任を果たしてほしい。
坂本鉄男
(2018年11月6日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)