坂本鉄男 イタリア便り 政権とEUの対立鮮明に

イタリアのポピュリズム(大衆迎合主義)2党が連立するコンテ政権が先月末に発表した経済財政計画をめぐり、同政権と欧州連合(EU)との対立が鮮明になっている。

コンテ首相は政治経験のない新人。内閣は実質的に第一与党「五つ星運動」のディマイオ副首相兼経済発展・労働相と、第二与党「同盟」のサルビーニ副首相兼内相が牛耳る。

 ディマイオ氏は自党の選挙公約である最低所得保障に固執し、予算案に100億ユーロ(約1兆3,000億円)を盛り込んだ。財政赤字は目標だったGDP(国内総生産)比1.6%から2.4%に膨れ上がった。

 EUはユーロ加盟国に財政赤字をGDP比3%、債務残高は60%以内に抑えるよう求めている。

 欧州では有権者から人気を取ろうと、ばらまき政策を続け債務危機に陥ったギリシャの例がある。イタリアは財政赤字を2021年にGDP比1.8%に減らし債務を圧縮する方針だが、債務残高は約130%とギリシャに次ぐ高水準だ。

 ユンケル欧州委員長は「イタリアはわれわれが合意した財政目標から距離を置きつつある」と手厳しい。

 同委は予算案がEUの財政ルールに違反していると指摘する書簡を出しており、対立はやみそうもない。

坂本鉄男

(2018年10月23日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)