イタリアの首都・ローマにおいて、約2000年に渡って街を見守り続ける聖地、パンテオン。普段から多くの旅行者で賑わうこの場所で、今月「広島・長崎原爆追悼式典」が行われました。
太平洋戦争末期、広島に原子爆弾が落とされた8月6日に合わせ、アーソス・デ・ルカ氏を会長とする「地球と平和」委員会は、広島と長崎の原爆の犠牲者を追悼する平和式典 ”Mai Più Hiroshima” を毎年開いており、式典は今年で23年目を迎えました。
会場にはローマ市役所、日本大使館関係者を始め、歩みを止める外国人観光客やローマ在住の日本人、現地大学で日本語を学んでいるというイタリア人学生など、多くの人の姿が見られました。
憲兵音楽隊による日伊両国の国家の演奏に始まった式典では、主催団体会長、在伊日本国大使館代表・徳尾幸氏によるスピーチに続き、日本・ロシア・フランスを中心に世界で活躍されている日伊協会会員の声楽家・抽象画家マキ・奈尾美氏が、人類の未来に思いを託した作品「あなたの手に」を披露され、国や言葉の違いを越えて参加者の人々の心を一つにしました。
また、広島の平和式典で毎年鳴らされている「平和の鐘」の録音が会場で流された他、式典の最後にはトランペット・ソロによる追悼曲 ”Silenzio d’ordinanza” が厳かに演奏される中、参加者全員が1分間の黙祷を捧げ、広島・長崎の原爆、そしてすべての戦争による犠牲者を悼みました。
終戦から現在に至るまでの73年の間に、まさに三世代が平和な時代に生まれました。同時に、筆者を含め多くの人間にとって戦争の悲惨さを実感する機会が少ないのが現状です。
地球最後の被爆国となった日本が世界の先頭に立って平和を訴えつつ、世界の人々と「ヒロシマ」を振り返り過去の過ちに学ぶこと。それは一人一人が命の尊さについて考える上で大切なことであり、今後も世代を越えて末長く続けていくべきものだと確信しています。
長年に渡るセレモニーの歴史、そしてイタリアの地で日本の過去に学び平和を祈る姿勢の重要性にも関わらず、ローマ在住の日本人の方々の間で式典の存在は知られていない現状を鑑み、私が副会長を務めます日伊文化協会「いっぽん協会」では、日伊協会さんのサポートとして今回の追悼式典の広報を担当しました。
追悼式典に参加いただいた皆様、インターネット上で情報の拡散に協力してくださった方々、そして何より平和へのメッセージと二度とない「瞬間」を共有してくださった全ての皆様に、この場を借りて感謝申し上げます。
大高志歩
プロフィール:高校在学中にイタリア留学を志し、日伊協会にてイタリア語講座を1年間受講。同協会の留学相談を利用し、ローマの語学学校DILITに一年の留学の後、ローマ第三大学で言語学を専攻。現在、サピエンツァ大学文学部所属。
東洋文化学科の学生代表を務める傍、2017年にはイタリア人有志とともに日伊文化協会「いっぽん協会 (Associazione Nazionale Italo Giapponese)」をローマで立ち上げる。
日本の伝統行事を中心に、イタリアでは知られていない日本文化の様々な側面を、イベント企画やインターネットを通して発信中。
いっぽん協会 フェイスブック公式ページはこちらから