去る14日、北イタリアの港湾都市ジェノバで、街の中央を横切る高さ約50メートルの高速道路の高架橋が、長さ約200メートルにわたり崩落した。翌日に祭日「聖母マリアの被昇天」を控えた行楽シーズンのただ中に起きた事故。約40人が死亡し、乗用車や大型トラックなど約30台が橋とともに落下する大惨事となった。
高速道路を走らせるためには、高架橋の建設が欠かせない。ジェノバは周りを山に囲まれ低地が少ない。イタリアの北・中・南部やフランスを結ぶ高速道路が交わる地点に当たるため、この街には何本もの高架高速道路が走る。
イタリアは、1950年代後半から国家経済発展の原動力として、高速道路網建設に乗り出した。64年には全長759キロに及ぶ北部ミラノと南部ナポリを結ぶ高速1号線、通称「太陽の高速道路」を全線開通させた。それ以後も高速道路の新規建設が続いた。
北ボローニャと南方約100キロ先のフィレンツェをつなぐ高架道路の完成は、途中にイタリアを縦貫するアペニン山脈を越える部分もあり世界の耳目を集めた。
高架道路の寿命は50年ともいわれるが、今回崩落した高架橋は51年前の67年に完成した。日本にとっても対岸の火事で済む問題ではないといえる。
坂本鉄男
(2018年8月19日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)