坂本鉄男 イタリア便り 生きた草刈機はコスト安

財政難にあえぐローマ市は市内外にある公園の草刈り費用の捻出に頭を抱えている。考え抜いた結果、羊を放牧するという考えに至った。低コストかつエコで、日本でも近年、注目されている手法だ。

 羊は体重50キロのオスなら1日に5キロ以上の草を食べるという。たくさんの羊を所有する羊飼いに放牧を任せ、それを数カ月間続ければ、市内外の公園がきれいになるというもくろみだ。

 こうした手法は、既に北伊のトリノ市や欧州のいくつかの都市では前例があるようだ。

 北伊ローディの女性が最近、フランス北西部のブルターニュ半島沖、ウェサン島原産の世界最小といわれる体高45センチ、体重15キロのミニ羊を20頭購入し、草刈り請負業を開始した。

 羊は性格がおとなしく、かわいいと感じる人も多い。ホテルの庭などに放しても牧歌的雰囲気を醸し出す。羊は群生の習慣があり、1ヘクタール当たり4頭をまとめて草の生える期間の春から秋まで貸し出すと、費用は2000ユーロ(約26万円)という。庭師を雇って草刈り機を操作させるより3割以上安く済むそうだ。

 ただし、サッカー場の芝生など1種類の草しか生えない場所での草刈りはダメで、羊が食べる雑草が生えていることが条件である。

坂本鉄男

(2018年8月5日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)