イタリアでも日本同様にストーカー行為をされた揚げ句、殺される女性は多い。また、復縁話のもつれから元カレに殺される女性も少なくない。こうした女性が犠牲となる殺人の増加が社会的問題となる中、殺人こそ犯さないが多数の女性に大きな被害を与える男もいる。
昨年10月、ローマの重罪裁判所はローマ近郊に住む会計士の男(33)に、「希代なる女性の敵」として懲役24年を言い渡した。
男は2006年から15年までの9年間に、エイズウイルス(HIV)感染者であることを隠したまま50人以上の女性と性的関係を結び、32人の女性および女性のパートナーとなった別の男性にも間接的にHIVを感染させた。検察からは病原菌を蔓延(まんえん)させ、流行病を引き起こしたとして終身刑が求刑されていた。
この事件は15年11月、1人の被害者からの訴えで発覚し、警察が故意にHIVを感染させたとして男を逮捕。実名で新聞に報道されると、男と関係を持ったと訴える女性が次々と現れ、警察は初めて事件の大きさを知ったという。
現在は、洋の東西を問わず性に開放的な世の中である。日本でも隠れたこうした女性の敵、あるいは男性の敵がいないと言い切るのは難しいのではないだろうか。
坂本鉄男
(2018年6月10日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)