先進国の首都の中でもローマのように道路は穴だらけ、市営交通機関はでたらめといった都市も少なかろう。市の交通局は、放漫経営のため累積赤字が14億ユーロ(約1835億円)に上り、バスは故障車が半数を占め路線は大幅に減らされている。しかも約1万2千人の交通局職員の欠勤率は10%以上ときては始末が悪い。そればかりではない。昨年度は平均15日に1度はストライキがあった。それも、必ず金曜日に行われるのだから、一般市民に「連休を作るため」と非難されても仕方がない。
職員のうち、組合に加入していない2,400人のほかは、いわゆる3大労組への加入者が6千人で、あとは12もある小組合の加入者である。しかもこの小組合も憲法で保障されたスト権は持っているからストだらけになるわけだ。
ローマには、幸いにして市営地下鉄は2路線しかないが、20人の運転手組合がストをすれば全線まひし、毎回地下鉄利用客は大混乱を起こす。
市民の権利より組合員の権利の方が重んじられるのにあきれ返ったためか、最近、ストとストの間隔は今までの10日でなく20日と決められた。そんなことより、「イタリアは労働に基礎を置く民主共和国である」との共和国憲法第1条を読み聞かせてやった方がよい。
坂本鉄男
(2018年5月27日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)