坂本鉄男 イタリア便り 母の日

5月の第2日曜日の本日は「母の日」である。育児、家事、最近では家計を助けるためアルバイトまでする母親は本当に忙しい日々を送っている。だが、このありがたい母親にささげる感謝の日の起源は案外最近だ。

 現在の「母の日」は、南北戦争時代の米国で人道主義者として活躍した女性の娘が亡き母をたたえて、1907年5月12日に母が奉仕した教会で追悼式を催し白いカーネーションをささげたのが起源だといわれている。戦前の日本では普及することなく、戦後米国にならって49年頃から5月の第2日曜日に行われるようになった。イタリアもほぼ同じで、57年に中部アッシジのひとりの修道士が米国にならって祝ったのが最初の「母の日」だといわれる。

 一方、「父の日」はなんでも男性優先だった時代に先に広まった「母の日」に合わせ、20世紀初頭、米国で生まれたそうだ。

 旧カトリック国イタリアでは、イエスの養父聖ヨセフ(イタリア名ジュセッペ)の祝日の3月19日に祝われる。この日には、ヨセフが幼いイエスと妻マリアを連れてエジプトに逃れたとき家族を養うため揚げ菓子を売ったと伝えられるため、ジャムの乗ったシュークリームに似た菓子ゼッポラ・ディ・サン・ジュセッペが贈られる。

坂本鉄男

(2018年5月13日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)