5月を意味する英語のmayも、イタリア語のmaggioも、語源はローマ神話の豊穣(ほうじょう)の女神Maiaにささげた月に由来する。ヨーロッパ各国では昔から、春の到来を祝う祭りとして5月初めに「5月祭」が存在した。
イタリアでは、共和国憲法第1条が「イタリアは労働に基礎を置く民主的共和国である」と定めてから、5月1日は「労働者の祭典のメーデー」として国民祭日になったが、昔は各地に春祭りがあった。現在、この名残をとどめる一番有名なものは、聖フランシスコの生誕地アッシジの春祭り、カレンディマッジョ「5月1日祭」である。
この祭りの起源もローマ時代に遡(さかのぼ)るとされているが、アッシジが一番勢力を持った1300年代初頭からは当時のイタリアの全ての都市と同じように、この小さな町も「上の区」と「下の区」の有力者が法王派と皇帝派にわかれて血生臭い争いを続けていた。だが、この祭りの時だけは、町が一つになって祝ったといわれる。
第二次大戦後に観光と町おこしを兼ねて、再びカレンディマッジョが復活したが、昔と違って、毎年5月の初旬に町が二手に分かれて争う町祭りになっている。「春の女王コンテスト」や「歌合戦」などが主なものだ。
坂本鉄男
(2018年4月29日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)