最近の刑法改正で、正当防衛が「程度」を越えたと判断された場合の「過剰防衛」の罪が軽くなり、護身用の銃器所持許可証の申請が急増しているという。イタリアでは、犯罪歴がなければ、貴金属商や銀行警備員のほか、クレー射撃選手や狩猟愛好家に対し、それぞれ護身用ピストルやライフル銃などの所持が許可されている。
銃器所持許可証を持つイタリア人は全国で約480万人。彼らが所持するピストルやライフル銃の数はなんと、1千万~1200万丁の多きにのぼると推定されている。2016年のイタリアの人口は約6千万人だから、計算上では赤ん坊を含め12・5人に1人は銃器所持の許可を受け、実際に所持していることになる。
こうなると、混雑した電車やバスに乗ったら隣に立っている人がポケットにピストルを忍ばせている、という状況もまったく不自然ではないことになる。
この点、日本は安全だ。16世紀の豊臣秀吉の「刀狩令」以降、一般人の武器携帯は基本的に許されず、今日に至っている。銃器の不法所持の罰則も日本は「1年以上10年以下の懲役」だ。しかし、イタリアでは3カ月から1年までの拘留とはるかに軽い。銃器の取り締まりは厳しいに越したことはない。
坂本鉄男
(2017年7月16日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)