難民問題を本当に理解していない日本人は幸せだ。イタリア政府は2016年に約20万人、今年は想定22万人と年々増え続ける難民問題で音を上げ始めている。鳥取県の人口が約60万人弱。わずか数年の間に日本の小さい県の人口と同じ位の数の難民が押し寄せたとき、日本がどう対処できるか考えてみるといい。
もともとドイツの主導で欧州連合(EU)が「人道的救済と受け入れ」を決めたのは、トルコからギリシャを経由し中欧と北欧を目指して逃げてくるシリアからの難民であった。ところが、EUの受け入れを知った政情不安定なアフリカ各地からの多数の難民が、リビア北岸から地中海を渡り、イタリアへと押し寄せてきたのである。
地中海上ではイタリア海軍と沿岸警備隊の艦船に加えて、「国境なき医師団」などEU各国の民間の人道的救済団体の船舶も積極的に難民を救出。イタリア南部の港湾都市では、受け入れ態勢が飽和状態になっている。難民の中には、北アフリカで洗脳されたテロリストが潜伏している可能性もある。
EUは早急にアフリカ難民をリビアで食い止める手を打たなければならない。日本も今のうちに、日本海を渡ってくるかもしれない難民の問題を真剣に考える必要がある。
坂本鉄男
(2017年7月9日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)