坂本鉄男 イタリア便り
最初に溺死するのは子供たち…粗製ボートで地中海渡った6000人の未成年難民

冬の海が荒れる時期が終わり、波が穏やかな夏が近づくとアフリカのリビア沿岸から大量の難民がイタリアを目指して地中海を渡ってくる。昨年の難民到着数は18万人だったが、今年はこれまでの最高記録の20万人に達すると予想されている。イタリア自体が就職難を抱え、他のEU諸国にもこれだけの難民をタダで養う経済的余裕はない。

彼らアフリカ難民は、リビア沿岸の渡航斡旋(あっせん)業者に1人当たり約1000ドルを渡し、100人以上が乗ることができる大型ゴムボートにすし詰めにされて地中海に押し出される。しかも、ゴムボートは粗製乱造で約10時間後、つまりイタリア沿岸に着く前に沈没するものが多いといわれ、結局、イタリアの沿岸警備艇と民間援助隊の船舶が救出している。

 難民の中には、子供だけでもヨーロッパに逃れさせたいと思う親も多く、昨年だけでも誰も付き添いがいない未成年者が6000人もいた。ボートが転覆するときは、最初に溺死するのはこの子供たちである。

 難民流出を防止するには、リビア沿岸に拠点を置き巨万の富を築く悪徳業者の一掃が必要だ。だが、リビア側の積極的協力がないため、今夏も地中海を舞台にこうした業者が横行し、大勢の子供の命を奪い続けるだろう。

坂本鉄男

(2017年6月11日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)