こんにちは。緑鮮やかな気持ちのいい季節、みなさん元気にお過ごしですか?
さて、今回はシエナのコントラーダの中から Chiocciola (キオッチョラ)を選び、カタツムリをテーマにお便りしたいと思います。
キオッチョラ Contrada della Chiocciola
シエナの町は、コントラーダと呼ばれる17つの地区に分かれています。その中で町の最南端に位置するのが Chiocciola のコントラーダ。
かわいらしいカタツムリがシンボルのコントラーダで、赤と黄色のベースに青いラインが入ったひときわ鮮やかな旗が目印になっています。旗の一画にある紋章には、カタツムリのモチーフとともに、19世紀のイタリア王ウンベルト1世と王妃マルゲリータのイニシャル( U と M )が交互に描かれています。
モットーは「 Con lento passo e grave, nel Campo a trionfar Chiocciola scende (ゆったりと、ずっしりと、キオッチョラが勝利を手にすべくカンポ広場に降りたつ)」と、威風堂々。馬のレースでコントラーダが競い合うパリオ祭の勝利を謳っています。
イタリア語の「かたつむり」
さて、 chiocciola ということばは、現代イタリア語でカタツムリのこと。イタリアに約250種類いると言われるカタツムリの総称です。語源はギリシア語の κοχλίας 。ラテン語の cochlea を経て、イタリア語の chiocciola となりました。
イタリアにはもう1つ「カタツムリ」を意味する単語 lumaca (ルマーカ)があります。こちらはカタツムリだけでなくナメクジも含めた軟体動物腹足綱の総称。殻をもったカタツムリを lumaca と呼ぶ場合、 lumaca al sugo といったように特に食用のエスカルゴを指すことが多いです。
エスカルゴの旬は秋から冬にかけて。5月ごろはカタツムリの産卵時期となるため、「 Di maggio lascia la chiocciola al suo viaggio (5月はカタツムリを旅立たせる)」ということわざのように、カタツムリは食べない方がいいシーズンとされています。
デジタル時代のカタツムリ
ITの発展とともに、 chiocciola ということばの使用頻度はぐっと増えました。というのも、メールアドレスなどで使う@マークをイタリア語では chiocciolaと呼ぶからです。縮小辞をつけて、「小さいカタツムリ」という意味の chiocciolina (キオッチョリーナ)と呼ぶこともあります。
例えば info@dantealighieri.com というメールアドレスは、「イ、エンネ、エッフェ、オ、キオッチョラ(またはキオッチョリーナ)、ディ、ア、エンネ……」といった具合に読みます。その由来は、スバリ、@の形がカタツムリに似ていたため。
ちなみにカタツムリの形状を思わせることから、イタリア語ではらせん階段も scala a chiocciola (スカーラ・ア・キオッチョラ)と呼ばれています。
日本では梅雨の季節が近づいてきました。「 La chiocciola è la messaggera della pioggia (カタツムリは雨の使者)」ということわざもありますが5月のお便りで雨を呼んでしまわないことを祈りつつ、どうぞみなさん初夏の太陽をお楽しみになりますように。
ダンテ・アリギエーリ シエナ
ヴァンジンネケン玲