イタリア下院が昨年5月11日、長年にわたって激論してきた同性婚の認可に踏み切ってから1年が経過した。
イタリアの有力紙が最近、役所にこの1年に届けられた同性婚の大体の総数を発表したが、あれだけ同性婚の公認を訴えた人が多かった割には実際の同性婚数はそれほど多くなかった。
法案が通過してから昨年12月末までが2430組、今年3月までの3カ月間は370組で、総数は2800組。イタリア全体では、考え方が進歩的といわれる北部と中部が合計2500組で、保守的な南部では300組にすぎなかった。
結婚とは男女が結ばれて家族を作るためのもの」として、同性婚には絶対反対だったカトリック教がかつて国教として圧倒的な力を持ってきたイタリア。その反動も小さくないはずだが、蓋を開けてみれば他の国々と同じであることが判明した。
つまり、最近のイタリア人男女も「正式な結婚より同棲(どうせい)」を選ぶものが多く、「束縛を受ける結婚より自由な独身」と考える世代が激増しているだけに、同性同棲者も無理に形式的な結婚を考えなくなっているわけだ。
いずれ日本でも同性婚を正式に認めざるを得ない時代が来ると思われるが、さて、どうなるか。
坂本鉄男
(2017年5月14日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)