最近のように同性結婚が許され、しかも、縁もゆかりもない代理母の胎内を借りて子供を産むことも認められる世の中になると、家族を構成する人々をなんと呼ぶべきか、ワケが分からなくなってきた。
北イタリアのトレント市で3月初旬、カナダで同性結婚した男性2人が、片方が提供した精子を用いて代理母が出産した双子の親権を求めて争った裁判があった。判決は、「2人はともに双子の父親である」だった。
昔風に厳密に考えれば、「双子の本当の父親は精子を提供した男性1人だけ」であり、もう片方の男性については、父親の配偶者の男性とでも言うべきなのだろうに。
この画期的(?)ともいうべき判決の後、英国で同性結婚し、代理母による出産ではなく普通の手続きで2人の子供を養子にした男性カップルに対し、フィレンツェの裁判所が同等の父権を与えた。
子供がお父さんを呼ぶ際には、「ボブお父さん」や「ジョージお父さん」などと呼べば混乱は避けられる。
世間の慣習と極端に違った生き方はしない方が無難だなどと言ったら、同性婚者から「大きなお世話だ。お前の考え方は古い」と、お叱りを受けるかもしれぬ。
坂本鉄男
(2017年4月9日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)