先月18日の午前と午後、ローマは計4回の地震に見舞われ、地震に慣れていない市民はビックリ仰天した。震源地は昨年の連続地震と同じく約100キロ東のアペニン山脈の麓。スキー客が宿泊するホテルが地震による雪崩に見舞われる惨事も起きた。
英国生まれの大学者でカトリックの聖人、ベーダ(673~735年)は、「コロッセオが倒れるときはローマも倒れる。ローマが倒れるときは世界も倒れる」と言ったそうだ。
ローマ第一の観光名所コロッセオは、完成後2千年間に起こった数々の地震のため、最上層と3層目の半分以上が崩壊している。だが、巨石とれんがを積み上げ、重みに強いアーチ構造を駆使して建てたものだけに、現在残っている部分が今後も容易に倒壊するとは思われない。
ローマ直下に地震帯は走っていないが、地下の地質は沖積層で地震の震動を伝えやすいといわれる。しかも、ローマの近くには東方のアペニン山脈の地震帯に加え、南と北の50キロしか離れていない地震帯もある。
現代のローマは耐震建築が少ないため、万が一、大地震が起きたら、ベーダの言葉とは違って、「コロッセオは残ってもローマは倒れる」事態になりかねない。
坂本鉄男
(2017年2月19日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)