坂本鉄男 イタリア便り 日本とイタリアの料理比較… 一番異なるのは何?

 日本とイタリアのテレビの料理番組を比較して一番違うのは使う肉類の種類と量である。

 日本の料理番組で使うのは豚の三枚肉やひき肉数百グラムといったところだが、イタリアでは牛・豚・鶏のほかハム・サラミなど加工品をふんだんに使う。

 実際、食肉の日本人の1人当たりの年間平均消費量は、統計がやや古い2009年度で牛肉5・9キロ、豚肉11・5キロ、鶏肉11キロ。3種で合計28・4キロだった。

 これに対し、14年のイタリアでは、牛肉20キロ、豚肉(ハム・サラミなど原料に使われるものを含めて)37・3キロ、鶏肉19キロの合計76・3キロであった。

 この数字を見ると、日本人の1人当たりの年間食肉消費量は、まだ貧しさから抜け出す途中であった40年前のイタリアの27キロにほぼ等しいことになる。

 日本では魚肉ソーセージがあるが、イタリアではソーセージといえば豚肉以外は考えられない。

  もちろん、食肉の消費量が食卓の豊かさを表すものではない。イタリアではカキやホタテの貝柱は高価で一般家庭ではなかなか手が出ないが、日本では庶民でも食べられる。

 最近、日本ではイノシシやシカの農作物被害が増大しているが、イノシシやシカの肉は料理してもハムにしてもうまい。研究の余地ありだ。

坂本鉄男

(2017年1月15日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)