L’avvenire giace sulle ginocchia di Giove 未来は神のみぞ知る

こんにちは。皆さん、お元気ですか?朝晩はだいぶ涼しくなり、暦の上でもあっという間に秋になりました。イタリアでは9月の中旬からいよいよ新学期が始まりました。今月はお便りのテーマも心機一転して、今まで登場した3つの惑星とは違うタイプの惑星、木星Gioveをテーマにお送りしたいと思います。

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太陽系の惑星にはいくつかの分類方法がありますが、今までに取り上げた水星、金星、火星は「地球型惑星」と分けることができます。岩石や金属を主成分とする比較的小さな惑星で、その名の通り地球もこのタイプの惑星です。

一方、今回のテーマの木星はガスを主成分とする巨大な惑星で、土星とともに「巨大ガス惑星」に分類されます。ついでながら、巨大で主成分がメタンを含む氷や水である天王星と海王星は、「巨大個体惑星」と分類されます。
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木星は、太陽系の巨大惑星の中でも一番大きな惑星です。直径は地球の約11倍、大きさは地球約1300個分にもなりますが、主に水素(約90%)とヘリウムの軽い気体でできているため重さはそれほどありません。約10時間とものすごいスピードで自転しているため、時速650kmもの風が吹き、遠心力で少しつぶれたような形をしています。

木星の表面には太い縞模様と、大赤斑と呼ばれる渦巻き模様のような点がありますが、これを初めて発見したのはイタリア生まれの天文学者Giovanni Cassini(ジョヴァンニ・カッシーニ)で、カッシーニは1660年に望遠鏡で木星を観察したと言われています。

giove-1cosimoイタリアの天文学者と言えば、お馴染みのGalileo Galilei(ガリレオ・ガリレイ)。木星には60を超える衛星がありますが、ガリレオは大型衛星を4つ発見しています。

1610年に発表した『Sideres Nunncius(星界の報告)』の中で、トスカーナ大公Cosimo II de’ Medici(コジモ2世・ディ・メディチ)に敬意を表してこれら4つの衛星を「Cosmica Sidera(コジモの星々)」と名づけました。

その後大公の意向で「Medicea Sidera(メディチ家の星々)」と改名された4つの衛星は、現在「satelliti medicei(メディチ衛星)」、「satelliti galileiani(ガリレオ衛星)」と呼ばれています。

ガリレオはそれぞれの衛星に名をつけなかったため、1614年にドイツの天文学者シモン・マリウスが命名したIo(イオ)、Europa(エウロパ)、Ganimede(ガニメデ)、Callisto(カリスト)が現在の呼称となりました。ちなみに、ガリレオにとって木星の衛星発見が地動説を支持する根拠の一つとなったことは言うまでもありません。

giove-6iuppiterさて、現代イタリア語では木星をGioveと呼びます。太陽系最大の惑星には、ローマ神話の偉大な天の神Iuppiter(ユピテル)の名がつけられています。

イタリア語のGioveは、ラテン語Iuppiterの対格ioveの形から派生したため、形が大きく異なっています。ローマ神話のユピテルは、ギリシア神話のZeus(ゼウス)に当たり、どちらも悠久の昔に共通の語源を持っています。その語源は、古代インドの天空神Dyaus(ディヤウス)や北欧神話の軍神Tyr(テュール)にも共通する「*Dyēus(光り輝く天の神)」というインド=ヨーロッパ祖語の言葉です。

それと大きく異なる形をもつIuppiterという単語は、神に呼びかけるときの呼格「*Dyēu-pəter (父なる神よ)」から派生しました。

2016年7月に木星探査機ジュノーは約5年に渡る航海を終えて木星に到着しました。来たる10月からは本格的な観測を開始し、太陽系形成に深くかかわったと考えられる木星の誕生とその歴史を解明すべく、多くの期待が寄せられています。ジュノーの名は英語でJupiter Near-Polar Orbiterの略ですが、ローマ神話のユピテルの妻ユーノー(英語名Juno)の名前ともかけられています。

木星は、夜空に明るく輝くことから「夜半の明星」とも呼ばれ、地球型惑星と同様に古くから人類に親しまれてきました。イタリア語の形容詞gioviale(にこやかな、感じのいい)は、「木星の影響で人々が快活で幸せになる」と信じられていた古代の迷信からできた単語と言われています。
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詩人Dante Alighieri(ダンテ・アリギエーリ)は『Convivio(饗宴)』で木星を芸術、幾何学と結び付け、また、熱い火星と冷たい土星の間にあることから「stella di temperata complessione(慎みのある星)」と呼びました。

『Divina Commedia(神曲)』では天国界の「第六天」を木星天とし、正義の美徳を象徴する場所としました。木星天では、正しい行いをした賢者たちの魂が歌いながら空を舞い、光り輝く文字で「Diligite iustitiam qui iudicatis terram (Amate la giustizia voi che giudicate il mondo、 世界を裁くものたちよ、正義を愛せよ)」と天空に綴ります。

不穏なニュースの絶えない昨今、世界中で先の見えない未来に不安が広がっています。イタリアには「L’avvenire giace sulle ginocchia di Giove(未来は神のみぞ知る)」ということわざがありますが、人事を尽くして天命を待つ、私たち一人ひとりが毎日できる限りのことをして、心穏やかに過ごせる平和な未来を願いたいものです。

ダンテ・アリギエーリ・シエナ
ヴァンジンネケン 玲