最近、日本を含め世界中で残虐なテロ事件や大量殺傷事件が連続して起こっている。これらのテロリストや犯罪者の割り出し、逮捕につながったのは、街中や幹線道路、駅をはじめとするさまざまな場所に設置された、防犯カメラの画像解析によるものが大部分である。
イタリアの新聞・テレビは、テロ事件ばかりでなく、連日のように汚職や犯罪の犯人摘発を報道している。その際、重要な役割を担った摘発手段は、電話盗聴と隠しカメラによる証拠固めである。
先日も警察の元締めである内務大臣の親族に便宜供与の容疑が掛けられたが、これも彼の父親への電話盗聴によるものであった。内相は「80歳を超えた老人のたわごとを信じるとは」と憤慨したが、捜査ともなれば首相や内相の家族といえども電話盗聴を辞さないことが分かる。
もちろん、昔からイタリア社会を食い荒らし国家権力に対抗するマフィア組織の頻繁なる摘発もほとんどが電話盗聴によるものである。
わが国でも、日本社会をむしばむ政治家の汚職、暴力団や麻薬の取り締まりなどには、たとえ善良な市民の一部の自由を脅かすとはいえ“イタリア方式”を導入するのも良策ではないかと思ってしまうのだが。
坂本鉄男
(2016年9月4日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)