夏休みシーズンたけなわだというのに、ローマの市中の道路の両側を埋め尽くす自動車の数がそれほど減らない。避暑にはほとんどの人が自家用車で行くが、それでも路上駐車が減らないのは、一家に1台以上の車がある家庭が多いためだ。
ローマ郊外に住む知人の家では、夫婦と子供3人がそれぞれ車を持っているが、路上駐車するので車庫がなくても問題はない。
統計によると2014年度のヨーロッパの大・中都市の車の平均台数は、人口1千人当たり489台だったのに対し、イタリアは610台だった。他の国々では公共交通機関の発達によりこの割合は減少傾向にあるが、市内の公共交通機関の発達が遅れているイタリアでは反対である。
市交通局のでたらめ経営により、ローマのわが家の近くを走る市営バスは路線が2本から1本に減らされた上、運行本数も減った。これでは、昨年度の通勤手段調査で「自家用車74・3%」「徒歩11・8%」「公共輸送機関11・3%」の結果が出るのも当然だ。
イタリア人の多くは、ぜいたくとの偏見によりタクシーは利用せず、路上駐車に慣れた結果、車庫を持たず、有料駐車場の利用も嫌う。これではイタリア中の道路の両側が路上駐車でいっぱいになるわけだ。
坂本鉄男
(2016年8月21日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)