坂本鉄男 イタリア便り 血税で外国を大名旅行できるほど、東京都知事は偉いのだろうか

 血税を使って外国を大名旅行できるほど、東京都知事は偉いのだろうか。都はそれほど金に余裕があるのだろうか。

 最近、バチカン市国の国務長官、パロリン枢機卿がリトアニア、エストニア、ラトビアを公式訪問した際、格安航空会社を利用した。ローマ法王を元首とするバチカン市国の国務長官は一国の首相に等しい。航空会社は彼の個人的な選択だというが、現法王の生活態度の「節倹」を自らも示したものと解釈されている。

 ローマ法王フランシスコは法王に選出されると、法王庁への出張聖職者用の宿泊施設の小さなアパートに移ってしまった。それまで代々の法王が使っていたサンピエトロ広場に面した建物の最上階にある法王専用アパートメントは、「広くて私の生活には適さない」として公式謁見などに利用する程度だ。

 法王はまだブエノスアイレス大司教だった時代も、飛行機はエコノミークラスしか乗らず、2013年にコンクラーベ(法王選挙)に参加するためローマに来たときも、法王庁が送った1等の切符をエコノミークラスに換えていた。

 結局、この選挙で法王に選出され、そのまま祖国に帰れなくなったのだが、何事も「上が範を垂れる」ことが大切なのである。

坂本鉄男

(2016年5月15日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)