去る12日、イタリア下院は、2014年4月より始めた上院の根本的改革のための憲法の一部改正法案を可決した。ただし、今回の憲法改正法案は両院で3分の2以上の賛成を得ていないため、正式な法制化を前に、今秋に予定される国民投票で賛否が問われる。
今回の改革が決まれば、イタリアは実質的に二院制を廃止することになる。これまで上院は、州ごとに直接選挙で選ばれた上院議員315人で構成されていた。改正によって、上院議員は選挙で選ばれることなく、州議会議員からの74人と市・町長からの21人の計95人と、大統領が任命する5人を加えた総数100人に縮小される。また、特別な上院議員手当は廃止され、上院事務局は下院に統合されるため政治経費の大きな軽減につながる。
新しい上院は、下院が持つ普通の立法権は持たず、内閣信任・不信任案を提出する権利もないため、わが国の衆参両院でみられる「ねじれ国会」現象は起こることがなく、内閣にとっては重要法案の可決が迅速になる利点がある。また、国家への貢献度が高かった人物に贈られた終身上院議員制度も廃止され、これに代わり7年任期の大統領が任命する名誉上院議員が新設される。今回の改革により道州制の理念は遠ざかったといえよう。
坂本鉄男
(2016年4月17日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)