坂本鉄男 イタリア便り ストの理由は「戦争反対」

イタリア憲法第40条は、労働者のスト権を認めているが、スト規制の範囲などに曖昧な点が多い。このため、交通関係の小組合加盟の労働者のストにより全国の交通機関がまひすることが頻繁に起こる。

例えば、総勢100人のバス運転手の中に10人の小組合加盟の運転手がいてストをすれば、ローテーションに支障をきたし残り90人の運転手が動けなくなるわけだ。

去る3月18日の金曜日(連休になるためと邪推したくなるようにストは金曜日が多い)も、小労働組合のストによりバス、電車などがストップしてローマなど大都市では交通まひ状態が出現した。いつのストでも一般市民にはストの理由がよく分からないが、今回はデモ行進の先頭に翻るスローガンを見て驚いた。

「戦争反対」のスローガンが大きく掲げられていたのである。

「平和安全法制」に関連し「戦争反対」を叫ぶ日本人ならともかく、現在のイタリア人には「戦争反対」とはどこの戦争を指すのか分からない。さすがに、ローマの有力地元紙も、「こんな曖昧な理由で交通をまひさせるのは許せない」と、国会で審議中の「小組合のスト規制法」の速やかなる成立を要求していた。「やぶ蛇」とはこのことか。

坂本鉄男

(2016年4月3日『産経新聞』外信コラム「イタリア便り」より、許可を得て転載)